竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
家を飛び出したところで行く場所なんかないということに気付いたのは、エレベーターで階下に降りている途中だった。
こういう時こそ『一人暮らしの彼氏』のはずだが、今日、あんなことがあったマー君のところに行けるはずもない。
しかたない……
とりあえずコンビニで立ち読みでもして時間をつぶそう。
ため息をつきつつ、エレベーターを降りたところで、ガツンと誰かに顔がぶつかった。
「わっ!」
「うきゃっ……す、すみませ、ん……!」
ボーッと考え事をしていたから、人が立っていることに気付かなかったらしい。
ぶつかったときはそうでもなかったが、相当な勢いでぶつかったらしく、鼻はジンジンと痛くなった。
もう、私ったらどうしてこうなんだろう……!
鼻の上を手のひらで押さえながら、慌ててエリは頭を下げる。
「んー、あんたノーメイクだったし、俺はいいけど。そっちこそ大丈夫? 思いっきりぶつかったから、鼻真っ赤じゃん」