竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「はい、大丈夫です……すみません」
顔を上げると、すぐ目の前に、目じりがキリリと上がった、大きな二重瞼の青年が自分を見下ろしていた。
エリがぶつかったのは肩口らしい。肩のあたりを気にしながら、彼はちらりとエリを目の端でとらえる。
い……イケメンスーツ!!!!!
その瞬間、エリの背筋に、ぞわーっと悪寒が走る。
激しい拒否反応を起こしながら、息を飲んだ。
紺無地のジャケットに薄いブルーのシャツ。茶色のドット柄のネクタイ。チャコールグレーのパンツを合わせて、胸元からは白いチーフが覗いている。
勿論靴とベルトの色は同じ、黒だった。
髪と同じ色の黒い瞳はぱっちりと大きいけれど、目じりが上がっているためか、可愛らしい印象はない。が、利発そうで頭の回転がよさそうな顔をしている。
どう見ても自分と同年代か、もしかすると年下なのかもしれないのに、エリがおののくくらい、その青年のスーツ姿は決まっていた。