竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
こんなカッコイイ人、このマンションの住人にいたっけ……?
いや、いないよね。誰かを訪ねてきたのかも。
エリは細く息を吐き、目を伏せた。
『あの人』が残した後遺症で、エリはスーツを着た男が生理的に無理だった。
お洒落であればあるほど、『あの人』を連想させた。
「失礼します……」
エリは小さく頭を下げて、彼の横を通り過ぎようとしたのだが――
「カズサ、待ちなさい!」
また、前からスーツの男が現れて、偶然なのか、エリの行く手を阻んでしまった。
「ツキト」
釣り目の、カズサと呼ばれた青年が、ため息をつきながら振り返る。
後から追いかけてきたのがどうやら「ツキト」らしい。
が、その姿を見て、エリは気圧されたように数歩後ずさる。
また、イケメンスーツだ……!!!