竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「ごめんね、エリ……。こんな風に、あなたを傷つけるつもりはなかったの。あなたが怒るのを見て、私、無神経だったって反省したわ」
桜子の言葉がまっすぐにエリに向かう。
エリは途端に泣きたくなるほど切なくなって、首を横に振った。
「私こそ……ごめんなさい。あの人のこと……言われて、頭が真っ白になっちゃった……だけど、正直に言うね。やっぱり私、会いたくない。あの人が今どこで何をしていようが、知りたくないの」
「わかった。あなたが知りたいと言うまで……黙ってる」
「――うん。そうしてほしい」
知りたいなんて思う日が来るとは到底思えなかったが、そういわないとこの状況は収まらないだろう。
エリの言葉を聞いて、桜子は小さくうなずき、そのまま部屋へと消えていく。
お母さん……ごめんなさい。
だけどこれが私の正直な気持ちなの。
今さら「反省してます」とか「会いたかったよ」なんて言われても、困るもん。私はそんな薄っぺらい謝罪の言葉なんか欲しくない。
一番いてほしいときにいてくれなかった、お父さんなんて……いらない。