竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

何もかも、中途半端だ。
自分はそういうダメ人間なんだ……。




社員食堂を出て、社員用のトイレで歯磨きと軽くメイクをなおし、職場であるCamelliaに戻る。



「舎李樹さん、ちょっと」



いつもはクールな店長が、ワクワクした様子でエリをカウンターの中から手招きする。



「どうしたんですか?」

「実はね、今度オーナーがお見えになるんだって」

「オーナーって……あの、オーナーですか?」



それまで落ち込んでいたエリの顔がパッと明るくなる。


Camelliaは、元は槙屋秋光(まきやあきみつ)という老舗菓匠の娘が始めたセレクトショップだ。美しい女性のための豊かな生活を、というコンセプトのもと、生活雑貨や、ギフトを各種取り揃えている。

エリは元々このショップが大好きで、趣味のいいアクセサリーや、雑貨をちまちまと集めていたのだが、アルバイトとして受かってからは、商品よりも、オーナーである槙島椿妃(まきしまつばき)にたいそうな憧れを抱いていた。



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