竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

「嬉しいですっ」



ショップの中なので、最大限に声を抑えたが、この場で飛び跳ねたいくらい気分が弾んだ。



「ふふっ、でしょ? 舎李樹さん、オーナーのファンだって言ってたもんねえ」

「はい、最終面接のときに少しだけお話させていただいたんです。ああいう人を本物のエレガントっていうんでしょうね」



ほんの数か月前だ。

エリはうっとりと、その時のことを思いだしていた。


それまで働いていたカラオケ店が営業不振で閉店し、その後ダメ元で受けたのがこのさざれ百貨店内にある、Camelliaのアルバイトだった。

たった一人の欠員のために数十人が応募に殺到したらしい。

面接会場であるCamellia本店に着いてからは、あまりの応募者の数に、絶望しかなかったのだが、何がどう転んだのか、最終選考まで残ってしまい、オーナーである槙島椿妃と面談をすることになった。


正直、何を話したのか、今となってはほとんど覚えていないのだが、美しいオーナーと話せたことに舞い上がっていたのは確実だった。



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