竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
わかるはずがない。そんなこと。
だって、今まで、平凡に生きてきたのに。
いきなり父親が残した店は、お前のものだなんて言われても――
「俺たちは全員、この店が欲しい」
そう言って、ソファーの後ろから前に出てきたのは花沙だった。
「で、師匠の遺言通り、あんたと結婚したらこの店が手に入るっていうのなら、俺は立候補するつもりだ」
「ええ!!!」
まさかそんなことを本気で思っているとは思わなかった。
「立候補って、私と結婚するってこと!?」
「そうだけど?」
「そっ、そんなあっさり言わないでよ! おかしいでしょうよ、そんなの!」
まったくもって意味が分からない。
そこまでして店が欲しいって、頭おかしいとしかいいようがないわよ!
そんなエリを見て、花沙は皮肉っぽく笑うと、背後の兄二人を振り返る。