竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「雪兄も、月翔も、同じ気持ちだろ」
エリの視線を受け、月翔は緩いウェーブのかかった前髪を指で払うと、兄の前に半歩出て、女性なら誰でも見とれるような微笑みを浮かべた。
「やぶさかではありません」
「ちょっ……」
ジリジリと後ずさるエリ。
この人たちは、見た目はとびっきり美しいけれど、やっぱり全員おかしい人種だ。自分とは相いれない、違う世界に住む人間だ。
こんな世界にかかわっていられない。弁護士でもなんでも相談して、遺産を放棄するしかない!
そう、エリは固く決心したと同時に、背後のドアが軽くノックされて、ゆっくりと開く。
まさかまたおかしな人間が増えたのかと、振り返ると――
「え……お、お母さん……?」
桜子が沈痛な面持ちで、入口に立ち、エリたちを見つめていた。