ラララ吉祥寺

木島さんの子供に対する愛情は、私のそれとは少し違っている。

私がどうにかして守ってやりたくて、彼を囲ってしまおうと躍起になるのに対して。

木島さんは、どうにかして自分で解決させようと、回り道をしてでも紡に考えさせる。

子どもだからと言って容赦なく、理屈を説明して納得させようとする。

紡は本当に理解しているかどうかは別として、彼があまりに真剣に話すので、頷くしかないのだと思う。

紡は彼を通して信頼を学んでいる。

私が彼を信頼していると同じように、紡は父を信頼している。

素敵なことだと思う。

何があっても揺るがない、絶対的な頼れる存在。

木島さんが目指しているのは、そんな父親像なんだろうなぁ〜

私たちは結婚という形に抵抗はしていても、家族としての役割には人一倍敏感で拘るのだ。

ふふっ……、このお腹の子が女の子だと知ったら、彼はどんな反応をするかしら?

今から楽しみ。

女の子相手に、彼はどういう父親の役割を演じてくれるのだろう?

愛情が勝って、私が妬くほどに溺愛してしまうのかしら?

厳しく躾ける役目はわたしに回ってきたりして。


「文子、なに一人でニマニマしてるの?」


気が付くと目の前に木島さんがいた。
< 347 / 355 >

この作品をシェア

pagetop