ラララ吉祥寺

優秀なビジネスマンだったという木島さん。

ちょっとだけでいいから、当時の姿を見てみたかったなぁ。

日焼けした顔と土方焼けした首と腕。

少し白髪の混じった硬い髪は常に五部刈り。

普段のツナギ姿や家でくつろぐ甚平姿を見ていると、スーツを着た木島さんを想像するのは難しい。

まぁ、今の彼仕事は古道具屋だから全くもって問題ないのだけれど。

店の売り上げは僅かだが、販売の傍ら修理業も営んでいて、最近では古民家の再生なる事業にも参加している。

その行動力は彼のビジネスセンスあってのものだと思う。

それに加えて、私の夫と紡の父親としての役割。

掃除、洗濯、紡の世話に食事作り。

どれをとっても私より上手にこなす彼。

私の作品の溜り具合を心得ていて、個展の日程もいつの間にか決まっていて驚いてしまう。

「木島さんと一緒だと安心するなぁ」

とわたしが呟けば、「僕は文子と一緒にいると元気が湧いてきます」と木島さん。


ふふふ……


木島さんは人をおだてるのがとっても上手だと思う。
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