ラララ吉祥寺

なんか随分と物分りが良いじゃありませんか?


自転車を荷台に積み込んで、後ろのチャイルドシートに紡が座った。

「ツムグ?」

バックミラーに映る紡は、なんだか凄く緊張しているみたい。

「木島さん、どんな密約が交わされたんです?」

「いやなに、出産中の父と子の心構えについてちょっとね」

「ちょっと?」

イタタタ……

「ほら、文子は心配しないで、元気な赤ちゃんを産むことに専念して」

「でも……」

「大丈夫。ツムグはちゃんと分かってますよ。それにほんの数日のことでしょ」

「それはそうですけど……」

木島さんが居れば、私が居なくても、多分何にも支障はないと思うけど。

「あ、日赤ですか? 産科でお世話になってる山本文子ですが、陣痛が始まりまして……」

イタタタ……

「はい、わかりました。これから20分程で病院に着きます。はい、了解しました」

「木島さん?」

「文子、このまま病院に直行するよ」

ま、その方が良いかな……、イタタタ……

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