ラララ吉祥寺
「文子、なんか怒ってる?」
「えっ、怒ってませんよ。呆れてるだけ」
知らず知らずのうちに、眉間に皺を寄せていたようだ。
いけない、いけない、幸せが逃げてしまうじゃない。
にっこり笑って答えたつもりだけれど、ちゃんと笑えていたかしら?
「心配ご無用、僕の一番は文子ですよ」
「心配なんて……」
すっと隣に寄ってきた木島さんは、私の腰をクイッと引くと、そのまま優しく抱き寄せた。
「文子の子だから、ハナもツムグも可愛いんです」
木島さんの愛を疑っているわけではないのだけれど。
「文子……」
チュッ、と触れたのは一瞬のこと。
「ツムグが見てます」
「見せておけばいい」
そんなやり取りもいつものこと。
「ぼくのいちばんはハナ!」
ね、と小さな指を更に小さな手に絡ませて、紡は満足そうに笑っている。
「だな、ハナの一番はツムグに譲るか」
紡の頭をクシャクシャと撫でながら木島さんも笑う。
木島さんてば、やっぱり一番を紡と競うつもりだったのですね。
そんな毎日の一コマさえ、記憶に留めておきたいと思う幸せ。
夢なら覚めないで、と願う私がいる。
2015.08.04
ベリーズ文庫大賞参加を記念して番外編を追記


