ラララ吉祥寺


「文子、なんか怒ってる?」

「えっ、怒ってませんよ。呆れてるだけ」


知らず知らずのうちに、眉間に皺を寄せていたようだ。

いけない、いけない、幸せが逃げてしまうじゃない。

にっこり笑って答えたつもりだけれど、ちゃんと笑えていたかしら?

「心配ご無用、僕の一番は文子ですよ」

「心配なんて……」

すっと隣に寄ってきた木島さんは、私の腰をクイッと引くと、そのまま優しく抱き寄せた。

「文子の子だから、ハナもツムグも可愛いんです」

木島さんの愛を疑っているわけではないのだけれど。

「文子……」

チュッ、と触れたのは一瞬のこと。

「ツムグが見てます」

「見せておけばいい」

そんなやり取りもいつものこと。

「ぼくのいちばんはハナ!」

ね、と小さな指を更に小さな手に絡ませて、紡は満足そうに笑っている。

「だな、ハナの一番はツムグに譲るか」

紡の頭をクシャクシャと撫でながら木島さんも笑う。

木島さんてば、やっぱり一番を紡と競うつもりだったのですね。



そんな毎日の一コマさえ、記憶に留めておきたいと思う幸せ。

夢なら覚めないで、と願う私がいる。




2015.08.04

ベリーズ文庫大賞参加を記念して番外編を追記
< 355 / 355 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:35

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
bikke/著

総文字数/97,449

その他298ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
仕事も金も 生きる希望も失った 僕 窮地を救ったのは 一人の女神 × 夫も子供も 生きる意味も見失った 私 乾いた心に水をまいたのは 一人の男 ********* start:2012.1.31. end:2012.05.13. ********* 睦月ゆき様 氷室 彩様 佳歩様 さいマサ様 tomo4様 高山様 明紫様 西島美尋様 素敵なレビューをありがとうございます! 2013.01.22. オススメ作品に選んで頂きました!
希望という名のきみへ
bikke/著

総文字数/35,683

ファンタジー99ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
西暦2023年夏 地球は偶発的に起こった 核施設の爆発により 死の灰によって覆われた 僅かに生き残った人類は 選ばれし者だけが住む ミテラを創り その存続を図る だが…… 百年後の今 その希望は失われつつあった ◆◇◆ start:2011.08.13 end:2011.
素顔のマリィ
bikke/著

総文字数/82,638

恋愛(純愛)187ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
遠いあの日、高校の美術室で、 「マリィ、自分を好きになれない人間に人を愛することなんてできないよ」 失恋したわたしに、流加の声が尖って刺さった。 時を経た今、わたしは自分を好きでいれているかな? わたしはわたしでいれているかな? 「マリィ、僕の前では素顔の君でいて」 わたしを励ましてくれた、 彼の言葉がずっとわたしの支えでした。 ◆◇◆ start:2015.01.02. end:2015.02.05. ◆◇◆

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop