ラララ吉祥寺
軋む階段を上る時も、彼は踏み板を一段一段撫でながら、いちいち感激するので困ってしまった。
「こういう軋みは、一枚板だからこそなんですよね。
この黒光りした板目がまた良いなぁ」
「そ、そうですか?」
褒められているのか、貶されているのか、正直判りにくい。
やっと階段を上がりきり、わたしは空いている一番手前の部屋のドアを開けた。
今日は晴天なので、部屋にはお日様が燦々と降り注いでいた。
日当たりが良いのだけが自慢の家なのだ。
ベランダの窓を開け、前回同様、一通り部屋と物干しの説明をした。
だが、後ろにいる筈の木島さんからは何の反応も無い。
まあ、男性だから興味なくても仕方ないか、と窓を閉めて振りかえった。