ラララ吉祥寺
そしてある日のこと、木島さんが真面目な顔でわたしに懇願したのだ。
「文子さん、折り入ってお願いがあるんです」
まさか、もう家賃の値下げ要求?と、わたしは緊張して身構えた。
「この家に高速インターネット回線を引きたいんです」
「それって何ですか?」
わたしは全くもってアナログ人間なので、スマホはなんとか必要に迫られ使うものの、パソコンに関しては全くの無知。
ファクス機能のついた電話機さえもインクの取替えなど四苦八苦なのだ。
「実は、龍古堂のホームページでネット通販を取り扱うことになりまして、その管理は店だけじゃ時間的に無理があって、自宅にもパソコンが必要なんです。
ゆくゆくは、ネットオークションも自社ホームページで行いたいですしね」
この家は電話回線しか来てないでしょ、と苦笑いされた。
と言われても、何がなにやら、どうしたものやら返答に困った。