ラララ吉祥寺

「それはどうやって手続きするんでしょう?」

わたしは恐る恐る聞いてみた。

出来ることなら、希望は叶えてあげたかった。

「細かい手続きは僕が変わって引き受けます。

契約名義は僕にして頂いて、月々の使用料も僕が個人的に支払います。

ただ、回線を引き込むのに、恐らく壁に小さな穴を開ける必要があると思うんです」

その了解を頂きたくて、と彼は申し訳なさそうに付け加えた。

なんだ、そんなこと!

「よくわかりませんが、必要とあればわたしは構いませんよ」

「ありがとうございます。助かります。

ルーターを付ければ、皆さんも回線に繋げますから、ご興味あれば言ってください」

「わたし、ほんと、そういうハイテクには疎くって……」

「文子さんみたいな仕事も、今はネットでイラスト注文受けて、メールでデータ送ったり、色々便利なんじゃないかなぁ」

「そうなんですか?」

「あ、できれば、龍古堂のホームページもデザイン的にリニューアルして貰えると嬉しいです。

僕、文子さんの画、線が優しくて好きなんです。

たまにはこんな世俗的な仕事も刺激になるんじゃないですか?

勿論、料金は相応にお支払いします。

それとも、骨董屋のホームページなんて辛気臭くて嫌ですか?」

すいません、こないだ偶然お仕事してるとこ覗かせてもらいました、と彼がかしこまって頭を下げた。

「いえ、そんなことは……」

画を褒められたのなんて久しぶりだ。

なんか懐かしいようなくすぐったいような。

「できれば是非」

木島龍之介は、いとも簡単にわたしの世界をこじ開けた。
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