ラララ吉祥寺

今、この家にいるのは芽衣さんとわたしだけ。

恐らく入浴中であろう風呂場からそれは伝わってきた。

そのただならぬ物音に、わたしは恐る恐るドアの外から声をかけた。

「芽衣さん?大丈夫ですか?」

もう小一時間、彼女は風呂に入っていた勘定だ。

いつもは30分程でドライヤーを使う音が聞こえるのだけれど。


「芽衣さん?」


やはり返事の返ってこない浴室の様子に胸騒ぎを覚え、わたしは思い切ってドアを開けた。

脱衣所に彼女の姿はなく、わたしはそのまま中に踏み込みユニットバスの扉を開けた。


「芽衣さん!!!」


そこには、湯船に身体を預けた格好で洗い場に座り込む芽衣さんがいた。

倒れたというよりは、座り込んだという感じ。

のぼせたのかもしれない。
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