ラララ吉祥寺

吉祥寺駅で下車し、サンロードを抜ける。

途中、ブックス・ルーエで雑誌を買った。

昔からある妊婦のための情報誌「たまごクラブ」を探していたら、なんと「初めてのたまごクラブ」なるものが出ていて、思わず見入ってしまったのだ。

初めての妊娠の心得とか、体調の変化とか。

ふむふむ、なるほど、と今のわたしの知りたいことが満載で。

わたし自身が妊婦じゃないのに、なんだかとても気恥ずかしかったのだけれど。

少しでも何か手掛かりが欲しくて、手に取った。


家に着くと既に灯りがともっていて、なんだかとてもほっとした。

木島さんが先に帰宅しているのだ。

「ただいまぁ」

玄関で久々に声をあげた。

いつもとは逆の立場に少し戸惑いを覚える。

「おかえりなさい。お疲れさま」

何故かエプロンをした木島さんが出迎えてくれて驚いた。

「あれ? 夕飯、外食で済ませてきたんじゃ……」

「それじゃ文子さんが食いっぱぐれるでしょ。

夕食用意してありますよ。

しめじご飯と揚げ出し豆腐、それに野菜の煮物。

早く手洗って、一緒に食べましょう」


いやいや、恐れ入りました。

キッチンからは、お醤油の良い香りが立ち上っていた。
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