ラララ吉祥寺

雅人とわたしは高校の同級生で、同じ美術部だった。

幽霊部員が多い中、わたし達は共に美大進学志望で、熱心に部活に打ち込んでいた。

雅人はデザイン、わたしは油絵。

部活の無い放課後も二人美術室でデッサンしたり、おしゃべりしたり。

いつの間にか一緒にいるのが自然になって、わたしは彼に恋をした。

彼の仕草や声や、わたしを見つめる優しい瞳が大好きだった。

初めて結ばれたのは高二の夏。彼の部屋で。

急速に縮まった二人の距離。

彼と自分との境界は見えなくなって、わたしは彼無しではいられなくなった。

妊娠に気づいたのはその年の冬だった。

生理が二週間遅れて、意を決して検査キットを薬局で買った。

恐る恐る試してみると陽性で。

何度も何度も見直したけど、それはやっぱり陽性の印で。
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