ラララ吉祥寺


「中絶費用は俺がなんとかする」


それがわたしが妊娠を告げた時の、彼の第一声だった。

「俺、大学行きたいし。文子だってそうだろ?」

彼の話は、あくまで中絶前提で。

「わたし……、産みたい」

そう告げた時の彼の冷たい目が今も忘れられない。

「中絶するなら費用は俺がもつし、病院にも付き添って行く。でも、産みたいって気持ちは理解できない」

俺は責任もてないからな、と言い捨てた彼は、わたしの知らない人だった。

そのうち妊娠が母親にばれて、親同士の話し合いになって。

産むか産まないかの最終決断を迫られた席で、彼は言ったのだ。

「僕と彼女はただの友達です。

なんで彼女のお腹の子が、僕の子だって決め付けるんですか?」

それはそれは冷たい目をして。

母とわたしはそのまま席を立って、わたしは学校を辞めた。

母はもう何も言わずに、わたしの産みたいという希望を叶えてくれようとした。

大学は子供を産んでからでも、行こうと思えばいけるから、と優しく言葉を添えてもくれた。

でも……、結局、わたしは全てを諦めた。

諦めざるをえなかった。

子供は流れて、わたしは希望を失った。
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