ラララ吉祥寺
<ミャァ、ミャァ……>
ドアの外で鳴く、小次郎の声で目が覚めた。
そうだ、餌をやるのを忘れていた。
「ごめんね、お腹空いたね」
わたしが部屋から出るのを見て、小次郎は勇んで階段を駆け下りていった。
軋む階段を気にかけながら、わたしも静かにその後を追う。
もう夜中だ。木島さんを起してしまう。
キッチンは洗い物まで片付いて、綺麗に整えられていた。
湧き上がる罪悪感。
結局、わたしは物事を完結できない中途半端な人間なのではないだろうか、という確信。
猫缶を開け、餌皿に移す。
小次郎が息つく間もなくがっついて食べる姿を眺めていた。
左膳も近くにいるだろうか?
昼間なら、声をあげて呼ぶこともできるのだけれど。
家の周りにいるのなら、扉を開けただけでも気づくだろうと、庭に続く掃き出し窓を小さく開けた。
空には満月に程近い月が上がっていた。
身を刺すような冷たい空気に身体を震わせた時、庭の影で何かが動いた。
「サゼン?」
わたしの発した呼び声に反応するように、大きな人影が塀を越えた。
「キャッ」
驚いて小さな叫び声をあげてしまった。
どろぼう……、だろうか?