それでも、愛していいですか。
どこからかクリスマスソングが聞こえ、自分の目の前を幸せそうなカップルが行き交う。
どうしたのかな。
クリスマスイブの夜に、一人誰かを待つのは、とても心細かった。
しかし。
いくら長針が回っても、いっこうに阿久津は現れない。
カップルが幸せそうに食事をしているだろう店の中に、先に入って待つ勇気もなく、外で立ち尽くしていた奈緒の体は、冷え切っていた。
何度手を擦り合わせても、温かくなるどころか、自分の手の冷たさを思い知らされるだけだった。
先生。
どうして、来てくれないの?
何度も携帯を取り出し、着信を確認してみるが、何も履歴は残されていない。
待ちくたびれて、阿久津の携帯に勇気を出してかけてみたが、電源が切られていた。
奈緒は、その場にしゃがみこんでしまった。
……先生。
阿久津先生……。
お願い。
会いたいよ……。
静かに降り続く雨のせいなのか、それとも自分の涙のせいなのか、街路樹のイルミネーションがゆらゆらと揺れて見えた。