色彩恋愛
「でも、ジッとしてられないの。」
「分かった、分かった。いくら私が言っても綾は行くもんね。」

少し呆れ半分が入っていたが、サエは「慌て過ぎずに気をつけてね」と、一言言って私を見送ってくれた。
昼休みが終わるまで、あと10分。
教室に戻る生徒の間を抜けながら、ただ一つだけ外の世界に続く扉を目指して走る。
彼に会える嬉しい気持ちで、弾む足が軽く感じる。
扉が近づき、ドアノブに手をかけようとした時だった。
私ではない誰かがドアを開け屋上から出てきた。
急に眩しい日差しが目に入り視界がはっきりしない。

誰?

人物を認識する前にドンッと、そのままその人にぶつかった。
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