箱の中の彼女
□

 美奈子の身体が、自分の腕の中にある。

 その感触に戸惑いつつも、孝太は離せなかった。

 これが、欲しかったのだ。

 いや、この人が。

 ぎゅうぎゅうに抱きしめる。

 会いたかった。

 抱きしめたかった。

 その思いをもう、孝太はこらえきれなかったのだ。

 チャンピオンになった。

 ちゃんと、美奈子に見合う、稼げる男になったつもりだ。

 だから。

 だから、何の障害もないと思った。

「「こ、孝太くん?」」

 腕の中の美奈子が戸惑って、彼を呼ぶ。

「オレ…好きです。美奈子さんのこと…好きです」

 やっと。

 本当に、やっと言えた。

 言ったら。

 完全に、タガがぶち飛んだ。

「「え? こ、孝太く…っ」」

 戸惑う唇を奪った。

 腫れているせいで、半分以上感覚が死んでいて。

 その死んでいる自分の唇が憎らしく、更に強く彼女に押し付ける。

 だが。

 孝太は、ひとつ忘れていたのだ。

 美奈子が、自分のことをどう思っているのか。

 勝ったことと、彼女に再会したことで一人盛り上がり、すかっとその重大な点を抜かしていたのである。

 ただただ夢中で。

 彼女の唇を、貪り続けた。
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