嘘、鬼よ。













はぁ、最近は苦しくて目が覚める。


毎回、嫌な目覚め。




寝てるときでさえ、うなされてるから逃げ場すらない。




『…~~~~っ!』

『~~…~~~。』



……外が騒がしいな…。


何かあったのだろうか?




この時代に防音なんて物はないんだろう。

じゃあ、私が痛みであげている声も外に筒抜けだったのか。






声が近くなる。

十数人はいるな…。




『…か……はい…す』


『そ……じょ…き…』



『……つ……い…ろ…』




こっちに来る…?



足音と話し声は、もう、数十メートルの近さまで来ているよう。





『芹沢さん!!』

『良いんだ。お梅が見たいといっているのだから』


『しかし、拷問を見学だなんて…!!
しかも、女が』




その、拷問をされているのは、女なのにね。




『いいから!』



その言葉と共に、拷問部屋の扉が開いた。




辛うじて目は開けるものの、状況がいまいち把握できない。



幹部とおぼしき人物たち数人と我体の良い大柄な男。
そして、すらりとした今日美人といったところか。



扉を開けた瞬間微かに匂ってくる、酒の匂い。

こいつら、昼間っから飲んでんのかよ。


って、いっても今が昼間かすらわからないが。






「………こ、れは」

「だから、お梅さん。
これは女の見るもんじゃ
「あんさんたち、アホかいな!!!」



なんだ、この女。
突然騒ぎだして。



うわ、近づいてくる。



「土方はんたち、見損ないました!!!
こんな酷いことするなんて!!!!!」


強く抱き締められ、傷が痛む。


抱き締めるな、揺さぶるな、傷に響くだろう。



そんなことを思いつつも抵抗が出来なのは、衰弱してるのと、この女の人がなんだか優しそうだったから。




「お梅さん。
酷いとかそういうんじゃなくて、長州のものなので拷問をしなければならないんです。
拷問なんて、みんなこんなもんです。」




この声は…、沖田か。




「だとしてもや!!!
いくら、長州の人やとしたっても、こんなの許されへん!!」



「だから、拷問なんてみん
「"同じ女"として、見てられませんゆーてん!!!!!」



あぁ、なんて優しい人なんだろう、この人は。






「お、んな…?」




「そうや!
こんなどっからどうみてもか弱い女の子を拷問するなんて信じられない!!」







――――……意識が、もう、だめだ。






―――――
――――






「まて、こいつは女なのか………?」


土方がこめかみがを押さえながら信じられないと言うように、尋ねる。



「なにいってはるん!?
正真正銘、純女の子やないの!!!」


お梅と呼ばれたその女は、叫ぶがごとく、土方を見ながら声をあげる。




「まさか…!?」


回りの人々も、目を見開き混濁しているよう。



芹沢だけがなにも言わず、無表情である。


「はっ!!
この子気ぃ失ってしまっとるやないの!!
私、この子の手当てと看病するから!
そこ退いてなっ!!」



お梅は女とは思えない腕力で三冷を持ち上げ颯爽と去ってく。






芹沢も、少しの余韻を感じたあと、固まった皆を嘲笑うかのように静かにその場を去る。








三冷もお梅も芹沢もいなくなったそこで、壬生浪士組のものたちは、固まったまま動けずに数十分間を空虚に過ごした。



(自分達は、女に手を挙げていたのか……?)



それだけが、頭のなかに巡っていた。










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