世界が終わる時の景色



彼女と話さないまま、時間が経った。

今日はついに、婚約者との顔合わせの日だ。

芸能人もお忍びで通うという、一流の和風料亭。


「志乃お嬢様」


着物を纏った志乃に、手を差し出す。

その手を取り、凛と立つ志乃。

ふたりはリムジンの中でも、終始無言だった。

でも、それでいい。


「凄く、お綺麗です。行ってらっしゃいませ」

「…ええ」


歩き出すその背中を、見送る。

これで、本当に終わりだ。



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