涙のあとの笑顔
 汗を拭き終え、着替えを手伝って、何も言わずにじっとしていると、声をかけられた。

「何か話そう?」
「ちゃんと休んでからゆっくり話をしよ?今は駄目だよ」
「じゃあ、抱きついて」

 わざとらしく深い溜息を吐いた。

「怪我人だよ?」
「気にしなくていい」

 悪化したら駄目なんだってば!どう納得させよう。

「これはどう?」

 手を握ると、ケヴィンは少しだけ目を大きく開いた。

「久しぶりだね。フローラから握ってくれたの」
「そう?」

 言われてみれば、ずっとケヴィンから手を握ったり抱きしめたりし続けていたよね。
 欠伸が出そうになったので、我慢をしていた。

「眠いの?」
「少しね・・・・・・」

 時計を見ると、夜中の一時だった。いつもなら、もうとっくに夢の中へ行ってしまう時間。

「来て」

 ケヴィンがベッドの端により、スペースを開けたが、二人で寝るにはやはり少し狭い。

「大丈夫、ここで寝る」
「床は禁止」
「じゃあ座ったまま・・・・・・」
「そんな状態で寝たら痛くなるよ?ほら!」

 力強く引っ張られ、ベッドに手をついた。ぐっと力をこめて握るので、諦めてベッドに入った。

「ふふっ、抱っこしてあげるよ」

 この人、見た目だけ歳をとっていて、中身はまるで子どもみたい。それは昨日、今日でわかったことじゃないからいいよね。

「フローラ」

 もう一度耳元で呼んだが、もう寝てしまった。

「ありがとう。ずっとここにいてくれたんだね」

 怪我をしたところは見た目より痛くなかった。フローラの傷ついた手を取り、起こさないように口付けた。

「もう少しくらい自分の心配をしたらいいのに・・・・・・」

 ここまでこの子を離したくないと思ったのはいつからだろう。
 最初は話をしても、暗い表情のままだったが、日に日に笑顔を見せたり、名前を呼んでくれる回数が増えることがいつしか大きな喜びとなった。
 フローラにも同じように喜んでほしいと思った。
 
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