涙のあとの笑顔
日記と女の子
 その後すぐにレナードや他の騎士達が来て、部屋へ運ばれた。意識はまだ戻らないが、大事には至らないということで安堵の溜息を吐いた。

「フローラ、少し休め。寝ていないだろう?」
「レナード、平気だから。ステラは?」
「大丈夫だ。あんなことがあったからまだ少し怯えているが、イーディがついているから」
「わかった」

 イーディはずっと怪我人の手当てや混乱している人達を落ち着かせたりしていたそうだ。イーディも無事で心から良かったと思える。

「レナード、話はあとで聞かせてくれる?」
「ああ。おやすみ」
「おやすみ」

 レナードが部屋を出たことを確認すると、ケヴィンを見た。
 さっきまで傷一つないように見えたのは魔法でそれを隠していたから。気を失ったから、魔法が解け、傷だらけの姿を見せた。

「ううーん・・・・・・」
「起きたの?」

 まだ目を開けず、寝苦しそうにしている。汗を掻いているから、ケヴィンの部屋まで着替えを取りに行った。ケヴィンの部屋に入るのはこれが初めてだった。箪笥を開けに行こうとしたとき、机の角にぶつかり、上に置いてあったものを落としてしまった。

「これ、ケヴィンと一緒に買った日記・・・・・・」

 落としたときにページが開き、書いてあることが見えてしまった。すぐに閉じようとしたが、そこには私のことばかり書かれてあった。初めて出会ったときのことや一緒に食事をしたときのこと、対決をしたこと、細かく書かれていて、自分のことをどんな風に想っているのかを思い知らされた。私は日記に顔を埋め、嗚咽を漏らした。

「ケヴィン・・・・・・」

 顔を赤くしたまま、着替えを持って、ケヴィンの部屋へ戻ると、意識が戻っていた。

「ケヴィン!私がわかる?」
「ん、フローラ・・・・・・」
「誰か呼んで来るね」

 部屋を出ようとしたが、手を掴まれていくことができなかった」

「いい、ここにいて・・・・・・」

 弱弱しい声で強請られ、渋々椅子に腰をかけた。

「それ、フローラが持って来たの?」
「うん、汗をかなり掻いているからタオルもね」
「拭いてくれる?」
「うん」

 よく考えたら、素肌を見るってことだよね?今は余計なことを考えず、集中しなくちゃ!

「顔が赤いけど、照れているの?」

 勢いよく頭を振ったが、照れているのだと思われた。さっきまで泣きじゃくって、今度は別の意味で赤くしているから何だか妙な気分になった。
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