涙のあとの笑顔
「あの、私も・・・・・・」
「ここは私達にお任せください」

 手伝おうとしたが、やんわりと断られた。
 仕方なく、廊下を歩いていると、誰かにぶつかった。

「わっ!」
「おっと、また会ったな」
「アンディさん」

 すっとアンディさんが私に近づいた。

「何ですか?急に」

 そういう行為をするのはケヴィンですよ?
 いつもケヴィンは私のところに来ると、匂いを嗅ぐので犬みたいと思った。

「甘い」

 お菓子だろうな、きっと。たくさんいただいたから。

「さっきお茶会に参加させていただいてたんです」
「知っている。薔薇園がいつも以上に騒がしかったから」
「楽しかったです!本の世界に入ったみたいで!」

 少し不安だったけど、姫様やまわりのお嬢様やメイドさん達と楽しいひとときを過ごすことができた。
 アンディさんは今日は何をしていたのだろう。

「それは良かったな。俺は魔法薬を作っていた」
「どんな薬ですか?」

 懐から液体が入った小瓶を渡してきた。

「試しに飲んでみるか?」

 何が起こるかわからないのに飲めない。
 怪しくて恐怖を感じる。

「飲みません」

 当然きっぱりと断った。
 そんなものを本気で飲むと思いますか?
 説明してから渡すでしょう。

「残念だな」

 結局、何の薬だったのかな。
 アンディさんの薬の効果は謎に包まれた。

「薬も作れるんですね」
「学校で学んだからな」

 私も学びたかった。ちょっぴり羨ましかった。

「お前が飲まないのなら、誰に飲まそうか」

 なぜあなたが飲まないのですか?

「アンディさんが飲めばいいじゃないですか」
「それだと意味がない」

 どんな意味を求めているんですか!人を実験材料にでもする気ですか!?

「あいつとは相変わらず仲良くしているようだな」
「ケヴィンのことですか?」
「そうだ」
「ケヴィンはいつも優しいです」

 とても好きになった。嫌われたくなんかない。
 いつだって優しい。傍にいてくれて、抱きしめてくれる。私ももっと彼に何かをあげたい。
 人のぬくもりがこんなに安心できるものだと実感した。
 長い時間一緒にいたい。

「好きなんだな、顔が笑っている」

 自然と笑顔になっていたみたい。

「そんなことないです」

 恥かしくなり、俯いてぼそぼそと呟いた。

「嘘が下手だな。部屋に戻るのか?」
「いえ、図書館へ行くところなんです」
「図書館?」
「はい、そうです」
「そうか。じゃ、俺はもう行くから」
「ではまた」

 彼は私の横を通り過ぎ、角を曲がって行った。

「今日は開いていたよね」

 アンディさんと別れてから私は図書館へ進んだ。
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