甘え下手
「なんだソレ」


不自然に思われたことで気まずい思いはあったけれど、それでも聞き捨てならなかった。


「え? 航太さんがそんなわけないよー」

「えっ、沙綾ちゃん櫻井室長知ってるの?」

「お兄ちゃんの友達だもん。ねえねえ、なんで航太さんが遊んでるの?」


今度は沙綾がビックリした様子で、仁の方へと身を乗り出した。

俺はそこまでしなかったけれど、沙綾と同じ勢いで気になっていた。


「いや、櫻井室長の部屋に女物のピアスが置いてあったとかで、比奈子ちゃんが落ち込んでたからさー」

「えっ、ウソ!? ピアスって、え!? ……それ私のかも! えー、どうしよう!?」


口に手を当てて立ち上がる沙綾には、心当たりがあるようだ。


「お前まさか比奈子ちゃんに隠れて、室長の家行ってんの?」


それはねえだろってムカついて、冷めた視線を送る俺に、沙綾は慌てて弁明を始めた。


「違うよ! やましいことなんて何もないもん! 航太さんには元カレのことで相談のってもらってただけだよ!」

「ピアス外したってことは、泊まったってことじゃないの?」


参田はショックを受けているというより、完全な野次馬根性で興味津々に目を輝かせている。
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