ルピナス





「それで、私が付いて行って、何をすればいいんですか?」

真澄は金属製の重たい如雨露を手に持ちながら尋ねる。

「それよりも、部外者の私が勝手に大学に侵入しては平気なんですか?」


花壇はただっ広いだけあって、いくつかのスプリンクラーが分散して設置されてあるが、真澄はそれを使用している所を一度も見たことが無い。
少なくとも、真澄の居たこの2年間では。

だから彼女はいつも、ハス口のホースを使って水をやるか、
この金属製の如雨露を使って水遣りをするかだ。


「うん?それは別に平気だよ。
制服が有る訳でもあるまいし。大丈夫、バレやしないよ。」

随分暢気な口振りだな、と弓月は感心した。


「で、どう?
頼まれてくれる?」

真澄は三脚イーゼルに手を置きながら立ち上がり、弓月に向かって橙色に似た絵具の付いた筆を振り回す。



「…まぁ、断る口実は見つからないので。」


そう答えた弓月に対し、真澄は白い歯を見せ笑った。



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