撮りとめた愛の色


汰人が座ると吹き抜けていた風が少し弱まる。そこまで強くはなかったけれど私にぶつかっていた風が汰人に遮られたからなのだと思う。


遠回し過ぎる行動に最初は気が付かなかったけど、ふとした拍子に汰人が大抵は風上にいると気が付いたのだ。


「…汰人がここ来るの、久々じゃあない?最近来なかったし」

「そうか?でも帰りが遅いと桔梗を迎えに来てたろ。まぁレポートとか溜まってたから先生達とは会ってなかったけどな」


汰人の言葉に相槌を打ちつつ、それもそうかと納得する。汰人は私がここに出入りし始めた頃話すようになって、実は高校が一緒だったらしいと後から知った。家が近いという事で大学がある日はその帰りに私を迎えに来る。


そんな汰人を一言で表すなら過保護じゃないかと思う。

こんな裏道を通って夜道に女のひとり歩きは危ないと怒られたことがある。


確かにそれはそうだけど。でも私だって成人はしてるし、もう大人なんだから迎えに来なくても大丈夫と何度言ってもきかないので諦めた。物騒な話も耳にするので今ではそれに甘えさせてもらっている。


「そういえば、しょうくん達が会いたがってた」

「あー…、あのチビ達な。今日はもう来た?」

「まだ。でも昨日来てたから今日は来ないかも。土曜日だし」


汰人は子供達から何故か圧倒的なまでの人気を持つ。好かれやすいともいうのだけど本人は対して何もしてないのだから不思議なものだ。

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