撮りとめた愛の色



「どうせ言いたいこと分かってんじゃん」

「…うるさいな」

「おや、喧嘩かい?」


私の予想通りのことを考えていたであろう汰人にちいさく毒づいた。事実なので否定はしない。後ろから聞こえた声に振り返るとグラスを片手に戻ってきた彼が微笑んでいた。


「あ、せんせ。聞いてくれる?」

「おい、ちょっと待て。何を言おうとしてんだ」

「ふふ、相変わらず仲が良いね」


私達のやり取りに彼は呑気な言葉を零す。汰人はぐしゃぐしゃに人の頭をかき回しながら「それより、先生って」と彼に話しかけた。


「また取材来たんだろ?忙しーな、有名書道家ってのは」

「え?なんで汰人が知って…」

「さっき話してたろ」

「…………」


いつからいたんだとは口にせず、じとりと汰人を睨んだ。どこから聞いてたんだと考えているとさっきの彼のセリフを思い出して薄れていた熱がまたぶり返してしまった。


「……………」

「、わ。ちょっと…何?」


更に力を加えてぐしゃぐしゃにされた頭に驚けば、なぜか汰人は不機嫌そうな顔で「…別に」と呟いて。私は手櫛で髪を直し首を傾げた。


……意味が分からない。

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