撮りとめた愛の色
「ええと…。確か、花火が綺麗なのよね。数も多くて」
頷いた彼は私の何気ない呟きに「嗚呼、そうだ」と付け加え言葉を続ける。
「花火はここから良く見えるから、ふたりとも暇だったらおいで」
「、いいの?」
彼からの思いがけない提案に、聞き返しながらもつい顔が綻んでいた。彼はそういうつもりで言ったのではないと分かってはいてもこういった誘いは嬉しくなってしまうものだ。
子供のように弾んだ声は縁側にやけに響いて、面食らった表情の彼を見てそこでハッと我に返った私は恥ずかしくなって意味もない言葉を何度も口にしていた。
「あ、や。あの…これは」
沈黙がいたたまれない。
嗚呼もう私ばっかりはしゃいで何喜んでいるの。彼はただ思い付きで言っただけなのに子供みたいな声上げちゃって……あああやってしまった。
うう、と自己嫌悪に陥りそうな私にくっと押し殺したような笑い声が聞こえて、顔をそろりと上げれば。
「、っく。…くくく」
片手で口を押さえながら着物に身を包んだ彼が肩を揺らして、明らかに笑っていた。あまり見ることのない笑い方に呆気にとられていれば、何故か汰人も忍び笑いをしている。
「ちょ、なんで笑うの」
「、くくっ。嗚呼悪いね、あまりにも桔梗が嬉しそうだから」
「っふは、そんなに花火好きなのかよ」
「……なによ。いけない?」
違うけど、彼に誘われたことが嬉しいだなんて本当のこと、言えるわけがなくて。私は意地を張るように言葉尻を強めて言い返した。