週末シンデレラ


「すみません、一也さんにも嘘をついて……」
「いや、俺はいいんだけどさ。職場の人に、彼氏探しているなんて知られたくないと思うし。その場しのぎの嘘なら、俺だっていっぱいついてきたから」

そう言いながら、一也さんは苦い顔をしてビールを口へ運ぶ。

「ただ、征一郎はそういうところ、すごく潔癖なんだよ。悪い奴じゃないし、相手の気持ちを理解できない奴でもないんだけど、嘘とか、隠し事とか……それだけは許せないんだ」

一也さんの言葉に、胸が痛くなる。その、許せないことをわたしは係長にしてしまった。

わたしが黙り込んでいると、一也さんの隣に座った麻子が口を開いた。

「でも、一也だって……都筑さんを呼び出すのに、詩織を紹介すること、黙っていたんでしょ。それは許されるの? 都筑さんの中で、大した嘘じゃなかったってこと?」

「いや、次の日にこっぴどく怒られたんだよ。『今度、嘘をついたら縁を切る』って。けど、一度の嘘で絶交までいかなかったのは、俺がいい加減な奴だって諦めている部分もあっただろうし、やっぱり友達として付き合ってきた年数もあったからかな」

一也さんの嘘にも、厳しい係長。それなら、わたしが受け入れられないのは、仕方がないのかもしれない。


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