週末シンデレラ
「それに、詩織ちゃんのおかげもあったんだと思う」
「わたしの?」
「怒り終えた征一郎に『いい子を紹介してくれたことは感謝している』って言われたんだ」
「そんな……」
嬉しい。けれど、そう思ってくれていた係長の気持ちを踏みにじったと思うと、申し訳なさに胸が痛む。
「だからこそ、かな……」
「どういうことですか?」
「詩織ちゃんを大事にしたいと思い始めたときに、嘘をつかれていたことがわかって、ショックだったんだと思うよ。征一郎、五年前にも婚約していた彼女に、ずっと嘘をつかれてたことがあってさ。女性に対して、ちょっとトラウマを持ってるみたいだから」
「トラウマ……」
わたしが呟くと、一也さんは小さくうなずいて、ゆっくりと話し始めた。
「征一郎が営業部にいるときの話だよ。取引先の社長に娘さんを紹介されたらしいんだ。征一郎は嫌がってたんだけど、大きな取引先だから、紹介を断ることができなかったんだって。それで会って、何回かデートするうちに、アイツも好きになって……で、お互いに結婚を考えるようになったらしい」
乗り気じゃない紹介から、重ねたデート……なんだか係長と“カオリ”みたいだと思った。