週末シンデレラ
定時に会社を出て、待ち合わせ場所である駅の噴水前へ向かう。係長は課長に呼ばれていたので、少し遅れるみたいだ。
弾むような足取りで外を歩いていると、十月の秋風が頬を撫で、夜空には綺麗な月が浮かんでいた。
こんなに気持ちよく仕事を終えたのは久しぶりだった。
午後は武田さん、大人しかったし。このまま仕事を押しつけられなくなればいいな。
そんなことを考えながら、駅に着いたわたしは、お手洗いで自分の身なりを確認していた。
鏡に映る自分は、いつも見慣れているはずなのに、係長の横に並ぶことを考えるとなにか足りない気がしてくる。
「あ、そうだ……!」
わたしは駅の地下にある薬局へ行って、ピンク色のグロスを買い、もう一度お手洗いへ戻った。
買ったばかりのグロスの封を開け、鏡を見ながら唇に乗せる。スッピンでも馴染む自然な色で、それでいてしっかり潤った。