週末シンデレラ
「おはよう……」
係長は挨拶をしながら、頭のてっぺんから爪先までじっと見つめてくる。わたしは恥ずかしくて落ち着かず、両手を握り合わせて立っていた。
「今日はワンピースか。メイクも加藤さんだとわかる」
それだけ言うと、係長はフイと視線を逸らした。
「へ、変ですか?」
もっとメイクをしたほうがよかったのか、それともパンツを履いたほうがよかったのか……そんな反応をされると気になってしまう。
「そうじゃない……ただ、困っているだけだ」
「困る……?」
首をかしげていると、係長が助手席のドアを開けてくれたので、車へ乗り込んだ。
「あ、あの……似合わないなら似合わないって、ちゃんと言ってくださいっ」
どんなことでもハッキリと言ってほしい。遠慮されることは嫌だった。運転席に乗り込んだ係長の腕を、言葉をせがむようにクイと引っ張る。
「……だから、困ると言っているんだ」
「え……? あっ……んんっ」
係長が困った顔を近づけてきた……と思ったら、唇に温かなものが触れる。
座席がギシリと軋み、彼の体温を近くに感じる。二度目のキスは優しくて、目眩がしそうなほど甘くて、身体の奥がジンと熱くなった。
「きみは……これ以上、俺をどうしたいんだ」
「ど、どう……って?」
「かわいすぎて、困るよ」
係長はそっと頭を撫でると身体を離し、車をゆっくりと発進させた。ハンドルを切る横顔は、耳だけじゃなく頬も赤く染まっていた。