週末シンデレラ


今朝はお弁当を作ることもできないほど、気が気じゃなかったけど、昼休みに入るころには、すっかりいつも通りに仕事をこなせていた。

「詩織、土曜日はどうだったの?」

蒸し暑い食堂で、日替わり定食のエビフライをつついていると、向かいに座った美穂が目をキラキラと輝かせながらたずねてきた。

「あ……うん、なんて言ったらいいか……」

朝は美穂が寝坊したらしく、ギリギリに出勤してきたので、話す時間がなかった。

もっとも、係長がいる前で話すわけにはいかないけど。

わたしがどう説明しようかと考えていると、美穂は箸を置いて小首を傾げる。

「どうしたの、タイプじゃなかった?」
「タイプじゃないっていうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ、性格が悪いとか? それとも、無職だったとか?」
「ううん。性格も不器用だけどいい人で、ちゃんと仕事もしてるんだけど……」
「なら、なにがダメだったの? もったいぶらずに、ちゃんと教えてよ」
「うーん……それがね」

前のめりになって聞いてくる美穂に、一から話そうとしたとき。

「……あっ」

食堂の入り口に係長の姿を見つけた。

注文する列の最後尾に並び、カウンターの上部に貼られているメニューを確認している。

「ねぇ……都筑係長って、前から食堂で食べる人だったっけ?」

コーヒーを飲んでいる時に、食堂の空調の話が出た。今まで見かけたことがなかったけれど、ただ気づかなかっただけだろうか。

わたしの疑問に、美穂は振り返って注文カウンターのほうを確認する。

「え、係長? ああ……来てるんだ。結構利用してるって、前に武田さんが言ってた」
「武田さんが?」
「武田さんって一時期、都筑係長のこと狙ってたみたいよ。でも、係長が全然なびかないから諦めたんだって。今は営業部の部長代理を狙ってるみたいだけど」
「へぇ……」

美穂の話を聞きながら、目は係長を追っていた。


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