―彼氏と彼女―




「…でね、最近その先生が…」




 この一年で、私は彼の前でも普通に話せるようになった。


 ……ドキドキは相変わらずだけど。

 でも、広瀬君とお互いの学校での出来事をこうやって帰り道に話していると、普通のカップルのように思えて、少し嬉しくなる。


 ……いや、普通のカップル…のはずなんだけど。




 いつもの別れ道になると、彼は「じゃあ、また明日」と手を挙げて帰って行く。

 私も「また明日」と、背を向けて歩き始めている彼に手を振る。


 それは、いつもの光景で。




 知らず知らずの内に小さな溜息を吐くと、私も家へと歩き始めた。

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