初恋の宝箱

「自分でもわからないんです」

柳瀬の問いに桃子は静かに答える

本当は自己嫌悪だ

遅刻した挙げ句に柳瀬に迷惑をかけたことによる

でもそれを柳瀬に言うのはどこか恥ずかしかったので、とりとめのない言葉を口にしたのだ

「何か悩んでることでもあるのか?」

桃子が本音を言っていないことなど1年間付き合ってきただけに柳瀬はお見通し

「先生、相変わらず鋭いですね」

泣きっ面に笑顔の桃子は柳瀬をドキッとさせた

「大人をからかうな。別に何もなければいいんだけど、何かあったらすぐ相談しろ」

ありがとう。柳瀬先生、と言っていつの間にか桃子は柳瀬の隣に立っていた

身長168センチと女子にしては背の高い桃子は柳瀬から見ても『デカい女』

はい、と言って差し出されたのは桃子のブレザーのポケットの中に入っていた飴玉

お前、お菓子の持ち込みは校則違反だぞ、と柳瀬は顔をしかめる

「まあまあ、そんな堅いこと言わずに受け取って下さいよ~」

『いつもの佐倉だ。さっきの涙はなんなんだよ。人騒がせな女』
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