初恋の宝箱

明らかに桃子の気持ちが乱れ出したのはこんな始業式の日からだった

今までは柳瀬のことは担任としてしか見ていなかった桃子

むしろ、やれスカートが短いだのネクタイをきちんと締めろだの

お前は私の父親か!と突っ込みたい時が多々あったのだ

皆が何故柳瀬のイケメンと騒ぐのかもわからなかった

けれど、あの始業式の日

少しだけ、本当にほんの少しだけ

柳瀬がかっこよく見える

柳瀬の担当教科は英語

週に5回ある授業のうち4回は柳瀬のことを考えて過ごしていた

ある日の英語の授業ー

「問3の問題を誰かに解いてもらうか」

そう言って教室を柳瀬は見回した

自信がない者はわざと目を逸らす

数ヶ月前までは桃子もそうだった

成績は真ん中ぐらいで可もなく不可もなくといった桃子だが英語だけは大の苦手

テストは常に欠点スレスレの低空飛行

柳瀬が何回補習を施しても改善の予知がなく、

『佐倉が英語が出来ないのは個性だ』と柳瀬は自分に言い聞かせていたぐらいだ

そんな桃子が最近は授業に飽きて爆睡することもなく起きて、しっかり黒板がある正面を見ている

お手並み拝見とばかりに柳瀬は桃子を当てることに決めた

「佐倉」
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