初恋の宝箱

「嘘つけ。柳瀬のことでしょ」

柳瀬という苗字を聞くなり、ち、違うよ!と動揺を隠しきれない桃子の姿を見て、さつきは「屋上行くか」と言った

ショートヘアにテニス焼けした肌のさつきは見るからにサバサバ系女子で、どこか抜けている桃子にとっては姉的な存在なのである

そんなさつきに隠しきれないと思ったのか、桃子はさつきの誘いに首を縦に振る

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本来なら生徒は立ち入り禁止の屋上

しかし、さつきがテニス部の先輩に鍵の開け方を聞いてきて以来たまに二人は気分転換を目的に利用している

「やっぱ外は気持ちいいね~!」

4月下旬の晴れた日の太陽は絶好の光を提供してくれる

「うん!」と言って桃子のテンションも上がった

「いつから?」

欄干にもたれかかり、さつきがサラッと桃子に尋ねる

おそらく、柳瀬がいつから気になるのかを聞いているのだろう

しかし、あいにく天然要素がある桃子にそんな短い質問が通じる訳もなく

桃子は真顔で何が?とさつきに聞き返した

「いつから柳瀬のことが好きなのかってこと」

「わからない・・・・ていうか、私本当に先生のこと好きなのかな?」
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