【番外編】惑溺 SS集
「あっ……」
カタカタと鳴り続ける鍋の中のお玉。
私の口からこらえきれずに漏れる、途切れ途切れの上擦った声。
動きと共に乱れていくリョウの呼吸。
明け方のキッチンにはとてもふさわしくない淫靡な音が響いて、頭がおかしくなりそうだ。
「……っつ」
ひくっと波打って締め付けた私の中に、リョウが小さな吐息を吐いて顔を歪ませる。
その色っぽさに全身が粟立つ。
お鍋の中では湯気をたてぐつぐつと煮える赤いスープ。
きっと私の体の中の血液も、あんな風に煮えたぎってる。
もう、体の中心も頭の中も全部全部、沸騰寸前でおかしくなりそうだ。
カタカタとお鍋の中で踊るお玉が、その激しさを増し大きく音をたてる。
リョウは小さく舌打ちすると、ガスコンロの方へと手を伸ばし乱暴にコンロの火を消した。
静かになったキッチンに響くのは、日曜の朝にふさわしくない音ばかりになった。