【番外編】惑溺 SS集
もしかして、キッチンでのこと覚えてなかったりするのかな。
私の左手に指輪をはめてくれたのも、酔ったノリだっただけなのかな。
そう思いながら自分の左手を見下ろす。
そこに控え目に光る細いリング。
いつもどおりそれを右手にはめていた方がいいんじゃないか、なんて迷いながらそっと左手の薬指から抜こうとすると、
「……薬あった?」
いつの間にかリョウが私の後ろに立っていた。
「ひゃ!」
驚いて飛び上がった私の声に、リョウがうるさそうに顔を歪める。
そして、左手の薬指から指輪を外す途中だった私の手元を見て、苛立ったように舌打ちをした。
「……っとに。本当に面倒くさい女だな」
あああああ。
リョウが怒ってる。なんか、すごく怒ってる。
「だって、あの、これは……!」