【番外編】惑溺 SS集
「似合ってない」
そう言って微笑むリョウは、沙織の事も矢野くんの事も見ていなかった。
ただ、私だけをまっすぐにみつめて、意地悪に目を細める。
その黒い瞳に魅入られたように、もう私の視界に他のものは何も入らなかった。
ただ何も言わず見つめられるだけで、私の心はリョウでいっぱいになる。
こんなにも簡単にリョウに支配される。
リョウはカウンターの中からゆっくりと出て来た。
まるでわざと視線を集めるような、優雅な足取りで。
相変わらず、綺麗な立ち姿だな。
長い腕をカウンターにつき、私を見下ろすその姿にみとれていると、ゆっくりと伸びてきた綺麗な指が、私の頬から顎をなでるように肌の上を滑った。
そのまま軽く顎を持ちあげ上を向かされると、黒い影が降りてきた。