【番外編】惑溺 SS集

その冷たい言葉にうつぶせていた顔を上げて、カウンターの中にいるリョウを見上げた。

「ひどい。そんなに似合ってなかった?」

まだ柔らかい舌の感触が残る唇にそっと触れてみる。

「見ててイライラした」

ひどい……。
矢野くんみたいに似合ってるなんて言ってもらえるとは思ってないけど、そんな冷たい言い方しなくたっていいのに。

視線も合わせず冷たく吐き捨てるリョウに、ずきんと胸が痛んだ。


「リョウ、怒ってるの……?」

いつもよりも冷たい態度に、戸惑いながら席を立ちカウンターの中に回り込んだ。

「ごめんね、こんな時間に突然お店に来て。
仕事の邪魔だったよね」

そう言いながら近づくと、リョウはグラスを洗っていた手を止めた。
水滴のついたままの手で黒い髪をかきあげて、怪訝そうに私を見る。

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