海の城 空の扉
「それでも、だ」

アルフレッド卿は妻を見下ろした。

「悟っているなら止めるな。死が訪れる最後の瞬間まで、あの者達はわたしの民だ。見捨てる訳にはいかぬ」


「ご領主様、いったい――?」

アルフレッド卿について来た男達がざわめく。


「この先に建物があったな」

アスタリスが口を開いた。

「俺が見た時は、そこから白い服を着た一団がこちらに向かっているところだった」

「死者の家だ!」

誰かが叫んだ。

「あそこには兄がいるんだ」

「俺の親父だって!」

「静まれ」

アルフレッド卿が片手を上げた。

「軍勢の方から船歌が聞こえる。『死者の家』の者達は、おそらく敵に立ち向かっている。だから攻撃が退いているのだろう。馬をもて。わたしは行く」

「一緒にお連れ下さい!」

「俺も!」

「俺もです!」

男達が口々に言う。


「行くのか領主?」

アスタリスの問いにアルフレッド卿が頷いた。
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