海の城 空の扉
「では、その高貴な心に送り物を授けよう」
アスタリスは背に背負った皮袋を外し、中から小ぶりの竪琴を取り出した。
その夜、
港町の者達は奇跡を見た。
人々は、月光と松明の炎に照らされ、オーロラのように色が変わる髪の若者が、不思議な音律の歌を歌うのを聞いた。
それは、海から生まれる波の馬の歌だった。
夜の間だけ陸も海も同じ速度で駆け抜け、乗り手を魔法の力で守る幻の馬。
その名をエーンバルと言う。
歌が終わるか終わらぬ頃、ピチャッピチャッとぬかるみを踏みしめるような音がした。
唖然とする人々の前に、何処からか何十頭もの馬が現れた。
いずれも奇怪な形の鞍をつけ、全身が青く光り輝いていた。
「悪魔の馬だ」
テオドロスが呟いた。
「いや、これは幻獣だ」
アスタリスは静かに答えた。
「お前達の神が造物主だと言うのなら、これもまた神が造りし物ではないのか、司教?」
「それは――」
「お前も行って目に焼き付けて来るがいい。あそこには死を恐れぬ者と、死を恐れながらもそれを乗り越えた者がいる。どちらが強いか分かるだろう」
アスタリスは背に背負った皮袋を外し、中から小ぶりの竪琴を取り出した。
その夜、
港町の者達は奇跡を見た。
人々は、月光と松明の炎に照らされ、オーロラのように色が変わる髪の若者が、不思議な音律の歌を歌うのを聞いた。
それは、海から生まれる波の馬の歌だった。
夜の間だけ陸も海も同じ速度で駆け抜け、乗り手を魔法の力で守る幻の馬。
その名をエーンバルと言う。
歌が終わるか終わらぬ頃、ピチャッピチャッとぬかるみを踏みしめるような音がした。
唖然とする人々の前に、何処からか何十頭もの馬が現れた。
いずれも奇怪な形の鞍をつけ、全身が青く光り輝いていた。
「悪魔の馬だ」
テオドロスが呟いた。
「いや、これは幻獣だ」
アスタリスは静かに答えた。
「お前達の神が造物主だと言うのなら、これもまた神が造りし物ではないのか、司教?」
「それは――」
「お前も行って目に焼き付けて来るがいい。あそこには死を恐れぬ者と、死を恐れながらもそれを乗り越えた者がいる。どちらが強いか分かるだろう」