宝物〜絆〜
 耳まで赤くなっているのが自分でも分かる。

 しかし私の気持ちなんて露知らず、追い打ちをかけるように立川が口を開いた。

「あっ、俺にもお願い。俺はミニスカートん時に頼むわ」

 こいつら……。一体、人を何だと思ってんだ?

「お前ら、ふざけんな!」

 もう何が何だか分からずに、思わず叫ぶ。

 すると秀人が苦笑しながら弁当を指差した。

「ハハ。冗談だよ。とりあえずメシ食うか」

 言われてみると、一本のはずが二本三本と吸っていて、誰ひとりメシを食おうとしていない。

「そっ、そうだな。つか美咲って喧嘩も強えけど、食う量も男並みなんだな。ナポリタンにオムライスにサラダって……」

 立川も慌てて話題を変えたのは良いが、相変わらず人をからかってないか? いや、確かに買い過ぎたけど。

「両方食いたかったんだよ。良いだろ、別に」

 なんだか開き直ってしまった。

 これでも、さっきの話とか真剣に悩んでたんだけどな。こいつらと居ると、自分が悩んでる事がアホらしくなる。もちろん良い意味でだけど。

「拗ねない拗ねない。んじゃそろそろ食いましょうかねえ。はい、いただきます」

 秀人は妙な言葉遣いをしながらにっこり微笑むと、箸を手に取って弁当を食い始めた。
< 236 / 475 >

この作品をシェア

pagetop