宝物〜絆〜
「へえ。んじゃ、おめえじゃねえんだな。どうせまた誰か来んだろうし、そん時、もしおめえの名前が出たら容赦しねえぞ」

 立川が凄みを利かせて言うと、バカ西は黙り込んでしまった。

 つかバカ西、それは肯定してるようなもんじゃねえか。

 それから数秒の沈黙が流れる。

「もう良いだろ?」

 自らが作った沈黙を自らで破ったバカ西は、開き直ったような態度を取る。

「はいはい、もう良いよ。お疲れさん」

 立川は面倒臭そうに答えると、手でシッシッと追い払うようなジェスチャーをした。

 バカ西は檻から解放された犬のように一目散に去っていく。

「あいつ、本ッ当にバカだな」

 立川は去り行くバカ西を見て、しみじみと言った。

「ああ。あれじゃ俺が犯人ですって言ってるようなもんだよな」

 秀人は苦笑いしながら煙草に火をつける。

「まあ聞かなくても分かってたけどな」

 私もつられて火をつけた。

 そして三人で煙草を吸った後、秀人たちは購買に行くという事で私は一足先に教室に戻る。

 教室に戻って何気なくバカ西の席を見ると、姿がないどころか鞄も置いてなかった。つまり帰ったという事である。

「あいつマジでバカじゃねえの。そこまでして自分が犯人だとアピりてえのか?」

 私は思わず独り言を口走ってしまった。
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